|
Sword & Sorcery Studio
局所的に噂のAdvanced Player's Guideを買ったので適当にレビュー。
200pのハードカバー。表紙のロゴが妙に日本語版AD&DのPHBとかを連想させてしまう。多分わざとやってるんだろうなぁ。当然カッコエエと思ってしまうノスタルジー。ノスタルジーといえばこのサプリにはスピードファクターがあるらしい、という事で買ってみたんですよつまり動機としては。だって好きだしね。武器の速度。ともあれ、この本はそれだけでなく色々なルールの提案集です。UAとはまたちょっと違う色合いだけどまあそんな感じのサプリだと思ってください。因みにちゃんと3.5e対応です。
第一章、キャラクターオプション。
最初はHeroic Merits & Tragic Flaws。初っ端からPCのデータを更に細分化する試みが。これは極端に高い、或いは低い能力値を中心に、能力値そのものに対してFeat的な特色をつけてしまおうという大胆な提案。Featのように良い効果だけではなく、文字通り悲劇的な欠点もある。例えばKilling
Handは剣で相手を平で叩いたりしても思わず刃が相手を斬ったりとLethal Damageしか与えられなくなる悲劇的なStr.付属のTragic Flaw。能力値毎にそれぞれ6つづつの計12個しか無いのは残念だが、しかし非常に面白い。同じ能力値で同じクラスでも全く異なった印象のPCに仕上がるだろう。次はRacial
Class Modifier、これも非常に良いルールである。それぞれの種族が取れる各クラス毎の特色のリストで、PCを製作して1Lvになった時にそのクラスの種族的特長を得る事ができるといったものだが、これで同じエルフFtr.でも特に鋭い目を持ったエルフFtr.(Sharp-Eyeを取得したのでSpotに+2)なんかが1Lv段階から再現できる。こちらは選択肢も多くかなりの満足度。この2ルールしか一章には無いが、非常に充実した2ルールだと思う。UAの色々に迷った人もコッチは即採用。是非。
第二章。キャラクタークラス。
通常のPrestige Classが6種。Dilettanteは色々な基本クラスの能力をビシバシかき集める珍しいクラス。雑多な能力なのは魔法も含めての話。Elementalistは特筆する事も無く想像した通りのスペルキャスター。Gallowglassは超重装備戦士。特製鎧凄すぎ。限界まで高まるArmor
Bonusに興奮。最終的には5ft.づつしか動けなくなるのだが。Gemcasterは魔法のスクール毎に対応した宝石に魔法を込めたりする。モノがモノだけにロウソクより高価。Pit
Fighterは次々と訓練でExotic Weaponに習熟していく見世物戦士。SidestepperはチョコマカとBlink、Teleport、Ethreal
Jauntで移動して戦う。…戦闘力は低いが。次はElite Prestige Class5種。単に通常のPrestige Classより必要とされる条件が厳しいだけ。その分強力というか記述やルールが多目。Arcane
WarriorはSpell-Like Abilityや武器の魔化だけでなく対魔法防御能力も高め。Plantmasterは上位Drd.で、Plant Companionを持てるようになる。当然植物系の特殊能力多し。Rogue
Hunterは盗賊を狩る能力に長けたクラス。つまり有能な盗賊は一番盗賊を捕らえ易い、そんな感じの。Temporal Mageは時間を操る魔術師。AD&Dに居たのもこういうものだったのだろうか。異様に凄いがその分条件キツイ。Undead
Baneはイラストで騙されてはいけない善のアンデッド退治人。しかも司祭系。でもイラストはアサシン。でも司祭系。続いてEpic Levels。要は20Lvより上の世界だが、ELHとは異なり30Lvまでをフォローしたルールとなっている。PHB記載の基本クラスの30Lvまでの表が載っているが、例えば9Lv超のSpellの大魔法やEpic
Featの不在等、ELHの方が面白いと思うが、崩壊していくバランスを抑える意味では20Lvの通常の延長となるこっちのルールか。
第三章。オルタネイトコンバットルール。
Advanced Initiative Systemでは、Fast、Secret、Variableの3種のInitiativeのルールを例と共に。これはまあそれほど面白くもなく。次はCritical
Fumbles。今は戦闘中の攻撃で1が出たら自動失敗だけだが、更にd20を振って1が出たらBotchとみなし様々な結果が適用される。様々な、と云っても7種だが。Alternative
Combat Rulesでは、戦闘ルールの更なる変更が。Phased Combatは戦闘の流れ自体の変更。細々と戦闘をやるには良いかもしれないしグッとSLGっぽくなるが面倒。そして今回の目的だったWeapon
Speed。思っていたよりずっとシンプルなルールだった。武器の種類、それも数個の武器以外は形状(片手武器とか)に従って分類されたものに従って+3〜−3までの修正をイニチアシブに受けるといったもの。武器の種類以外の修正も少しだけある。これで速い武器は多少速くなったがさほど影響が無いのかもしれない。Aromor
Damageは鎧の耐久度ルール。修復に関しても。Combat Defenceは戦闘中の身の守り方をArmor Defence、Block Defence、Dodge
Defense、Parry Defenseの4種に分類。Wound Level SystemはUAでもあったような非HP制ルール。個人的には興味無し。Detailed
Critical Hitsは素晴らしい。これだけで買ってよかったと個人的には思った一品。クリティカル時の倍率を一段階下げ(×2なら×1に低下。つまり通常のダメージ)、かわりに命中部位を決め、そして武器の種類毎に用意(魔法のエナジー表まである)されていた表でダメージ量に基いて効果を決定する、といったもので、個人的には通常のクリティカルと併用して使っていきたい。力任せに殴った時は通常のクリティカル、急所を狙った時にはこのクリティカルルールを、といった感じで、クリティカル時にどっちの攻撃だったか各PLが決定すればいいと思う。
第四章。アルカナスペルキャスティングシステムズ。
Mana-Based Spellcasting SystemはUA等のSpell PointをManaに云い換えたモノ。さほど目新しくも無し。しかし、次のSkill-Based
Spellcasting Systemは斬新。実際に運用してどうか、というのは別として面白い試みではあると思う。Spellcasting Critical
Successes and Failuresは普通に使えて面白い。先のSkill-Based Spellcasting Systemと連動しているルールだが、他の(当然通常のD&Dでの)Spellcasting
Systemでも使用できるようになっている。各School毎にSuccessとFailtureが書いてある表を見て、ダイスで決定した値と比べて更なる効果を適用する。
第五章。ヴァリアントマジック。
4種の魔法体系に属する4種の基本クラスが紹介されている。Aethercraftに属するAethersmith。エーテル技師は直接に魔法を使わず、Aethersmith
Devicesという機械を媒介にして魔法的力を使う。Animismに属するAnimistは動物や精霊の仲間であり、インディアン風のDrd.と云えばわかり易いか。Geomancyに属するGeomancerは要は風水師。西洋でのLey
Lineは地のエネルギーの流れの線であり、風水だと龍穴めいたものだが、こういうところから力を引き出す。Soulcraftingに属するSoulcrafterは魂を操る魔術師。これら4種の基本クラスにはそれぞれSpell
Listが用意されている。68個のこれら4種用の追加Spellもこの章の最後に載っている。
第六章。キャッスルアンドキープ。
タイトルとは裏腹にコミュニティ、要は村や町のルール。なんとこの章ではこういったコミュニティにPCやNPCのようなデータフォーマットを与えようというステキルール。今回のサプリで一番*面白かった*のは間違い無くここ。大規模戦闘用d20のCry
Havocの部隊なんかの延長なのだろうが、町に能力値が付くというのは物凄く新鮮。例えばモンゴルのパオ(包)の集落は攻撃力と機動力はあるけど耐久力が無くて知力も低く、魅力は無いけど知恵はそこそこ、とか想像したら能力値を振り割れと、そんな感じの。Str.とかおなじみの能力値は無く、コミュニティ用に用意されているのはForce、Mobility、Resilience、Learning、Awareness、Commandの6種。当然能力値だけではなく、クラスに相当するCommunity
Typeも用意されている。Civilian、Military、Arcane、Religiousの4種で、これを組み合わせてのマルチクラスも可能。軍事宗教都市に成長するぞ、とか町を育てる楽しみも。ここまで書くと想像つくと思うのだが、Community
Skill、Community Featも当然ある。運用についてのルールは多くは無いが、これをベースに色々できそうだし、そもそもこういった形での都市ルールは非常に斬新なので一読の価値ありだと思う。
と、まあ、ここまで駆け足で適当読んでみたが全体の感想としては、あまりルールが煩雑にならないながらも個性が出るキャラメイク、戦闘がより楽しくなるクリティカル/ファンブル、そしてスピードファクター、これらも導入にまったく違和感を感じない。プレステージクラスは普通に使えるし、4種の魔法系統はNPCなどで使っても面白いだろう。そして個性的な都市ルール、これらが満載されていてしかも良い意味でアッサリしていた感じである。d20で何かUA的なものに更にプラスする時は是非どうぞ。
[SiG Blog:2004/06/20投稿分] |